開かれた大広間の扉の先を見つめると、いつかの時のように玉座の前に白金の男が跪いている。その髪は大きな窓から差し込む日差しを受けて煌めいているようだ。
いつもと違うのはその髪がきちりと一つに纏まっていることだろうか。
男の背を見つめながら、エリアスは皆が見守る中、歩を進める。
「面をあげよ」
エリアスが玉座の前にたどり着くと、ガニエ王の言葉と共にルドヴィークが立ち上がる。
その姿は黒いカッチリとしたガニエ風の詰め襟を来てもなお、優美さを失っていない。むしろ、普段とは異なるその控えめな出で立ちがルドヴィークの華やかさよりも凛々しさを引き立てていて、エリアスはどきりとしてしまう。
「今日、この時からミルヴァの王子、ルドヴィークはこのガニエの一員となる。…エリアス、ルドヴィーク」
「はい」
二人の声が重なる。
「ここに二人が夫婦となることを認める。このガニエの王である私が証人となろう」
わっと祝福の声と拍手が響く。
きっとまた不安になることはある。自分の不甲斐なさに情けなくなることもあるだろう。先のことなど誰にもわからない。けれど自分はこの男と共に歩むことを決めたのだ。
横のルドヴィークを見やれば、エリアスを見つめていたのかすぐに目があった。その瞳が穏やかに綻ぶと、その瞳に写る自分もまた彼と同じ顔をして微笑んだ。
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